私はPDDと診断されていますとい方が、ダンケではどのような治療をしていますか、その施療の実施方法を教えてくださいという問い合わせがあった。
それに対して、私は夢分析や箱庭療法があるけれども、真剣な話し合いが必要であり、また、治りたい気持ちが決まったらお出でくださいという返事を書いた。しかし、未だに返事が無いところを見ると、まだ決心がつかないか、真剣な話し合いに恐れをなして回避されたか、治りたい気持ちがもう一つなのだろうと思っている。
PDDと診断されているというけれど、PDDの中の何であろうか。
PDDとはPervasive Developemental Disorderのことだと思うが、これはDSMというアメリカの診断基準で使われるものである。この中には自閉症、ならびにアスペルガー障害、注意欠陥多動性障害、学習障害などが入っている。その方は多分アスペルガー障害か注意欠陥多動性障害なのであろう。これらは今精神科領域では脳の障害とされ、もっぱら薬物療法や認知行動療法が行われている。しかし、それらの療法と診断された問題との間には納得できる説明は無いように思われる。
私が会った人やスーパービジョンでかかわった事例から考えて、これらの障害の基底にあるのはすべて愛着障害である。つまり、身体接触や情緒応答の不足がある。多くの親は、勉強ができれば良い、ものごとが知的に理解できていれば、そのうち何とかなると考えているのではないか。母親ばかりでなく父親もそのようである。自分も子どもの頃はそうだった。今によくなるとのんびりと構えている。実際、小学校高学年になるとかなり改善し普通になってくる例が少なくない。しかし、対人関係の能力はあまり改善されることがない。多分親の代からPDDが育ってくる要因があったのであろう。そして子どもの代ではもっとはっきりしてきたのだろう。
対人関係の能力は愛着関係でしか育たない。口と乳房の関係が基本で、それに言葉での確実なやり取りが必要である。大きくなると身体接触が乏しくなるので、情緒的なやり取りをしっかりとする以外に手は無い。しっかりと話をし、それに対してしっかりとした応答をしてもらうことによって、しっかりと目を見て話すこと、それによって自分が大切にされていることを経験し、自分はここにいるというという感覚を確かなものにしていくことそれが大切である。そうすることによって、自閉的な心が開かれ、知的なものだけでなく、遊びの世界にも心が開かれる。人に相手をされながら遊びの世界に没頭することによって自分の心の世界ができる。そうすると心が落ち着く。それは自閉的な孤独な遊びの世界とは全く異なる。遊びの中でのやり取りから対人関係が開かれてくる。人は自分の気持ちを大切にされると安定し、安心して誰とでも付き合おうとする。好き嫌いが少なくなり、嫌いなこともやるようになる。こうしてアスペルガー障害もADHDも学習障害も改善される。PDDの改善には遊戯療法が一番良いと考えている。
大人の場合は遊びができないから、自由な、そしてしっかりした話し合いをすることが大切だと思う。だが、PDDの人はしっかりした話し合いということが苦手ではなかろうか。これが問題である。だから、話し合いを確かめながら進めていくことが良いと思う。