ファーストフードという言葉がある。お鮨は元々回転寿司のように簡単に食べられる江戸のファーストフードであった。それが店構えの立派なすし屋になって、スローフードになった。
ファーストフード的な面接は短期療法や認知行動療法である。頭で考えて、あなたのこの面を治しましょうということになる。治らなければ短期だから仕方がないと諦めがつき、なかなか効かない風邪薬と同じだと思うに違いない。
しっかりしたスローフードに匹敵する面接、店構えのしっかりしたすし屋に匹敵する心理面接を私は目指していたのではなかろうか。
私たちは相談室を構え、高い面接料を取っているので、その高い面接料に見合う面接をしなければならないと思う。そうするとつい問題をしっかりと見据えた面接になりがちである。見た夢の内容から現在当面している問題をはっきりさせる。これは相談を受ける側にとって毎週行うとまことにきつい仕事になるようである。だから、大体月2回のペースになる。
しかし、自分の問題はしっかり考えないとそれに対する答えが心の中から出てこない。料金が高いとそれだけ圧力がかかって夢を見るようになる。夢は正直である。
その夢を解釈して、問題はこうですとはっきりさせるときつくなる。そこで河合隼雄先生はあまり解釈せず、夢の指し示す方へと思考をめぐらせていたのではないかと思う。問題を明確に指摘しない分とてもスローである。問題を明確にしないで、漠然と捉えながらまたこの次にしましょうというやり方は面接内容へのすごい集中と次に期待する力がいる。
しかし、これは問題を明確にしない分無意識に圧力をかけることになる。私にはそんな神秘な力があるだろうか。スローフード的なセラピー、スローセラピーに向わねばならないと思う。