最近、電車を待ってホームに立っている人を、入ってくる電車の前に突き落とし殺してしまった青年がいました。彼は成績はトップクラスだったそうですが、経済的に進学できなくて、と言う事情がマスコミで報じられました。彼がどのような家庭環境で育ったかわかりませんからこの事件については何もいえないのですが、私は多くの事例からこれに関連することを思い出します。
小学校高学年のある男の子は、友達に暴言や暴行について先生が指導に困っていました。自分の通り道にいる子に悪口を言い、突き飛ばすのです。人には怪我をさせるような乱暴さのある一方で、彼は虫が好きでかわいがっていました。時には人を殺したいとつぶやくような乱暴さを持ちながら、一方では小さないのちを大切にするやさしい心があるのです。
これを皆さんはどう理解しますか。
彼はキレ易い両親に育てられました。父親ばかりでなく母親もキレ安かったのです。
私たち世代は、お母さんはやさしいという母性神話を信じていました。しかし、その神話は20年以上前から崩れ始め、今では、お母さんは怖い、厳しい、信じられないと父親並になってきました。怖さで男女どうけんというわけです。実際は、怖いお母さんだとお父さんは大体やさしいのですが。父親も母親も厳しく怖いと言うケースも出てきました。彼は生れたところが良くなかったようです。
家庭で子どもが厳しく叱られると、それに対する怒りが学校で友達に出るようです。ビリヤードの台の上で突かれた玉が他の玉に当たり、さらにそれがいくつもの玉に当たるように、様々な衝突が起き、クラスが混乱するのです。
友達に乱暴を働きながら、虫をかわいがるところに、友達には共感が働かず、相手の気持ちもわからない虫を一方的にかわいがるところに悲しさがあり、また、虫の心のような小さな心しか育っていないことが感じられます。虫のような小さな心では友達に太刀打ちできず、突き飛ばしたり暴言を吐いたりするのでしょう。相手をとても恐れているから、強がりの乱暴が出てくるのではないでしょうか。