薬物療法と心理療法

 笠原嘉先生の臨床講義の前半3回を終わった。

 笠原先生は薬物療法の立場である。

 統合失調症は自分では抑えられない大きな不安を抱えている。最近は薬が良く効いて、不安を抑えることができるので、先ず薬を投与して不安を抑える。疎通性が良くなったところで患者を支え、改善を数年の単位で待つという姿勢である。

 うつ病も、最近は昔の中年の、真面目で責任感の強い、しっかりと働いてきた人の、いわゆるメランコリー型うつ病が少なくなり、若年のうつ病が増えてきた。抗うつ剤も進歩してきた。うつ病の経過も良くなったり悪くなったりの経過をとり、2,3年のうちに治るという見方である。

 先ずは薬を投与して長い目で見て何とか納まるのを待つというのが薬物療法の基本的な考え方である。

 何とか納まるのを待つということ、そこには悩む人の生き方を眺める客観的な立場が基本にあり、心の内面に入って、共に考えるという姿勢は少ないように思われる。人を病の外面から見る薬物療法の立場と内面から心理療法の立場は基本的に違うということをはっきり感じた。

 今、多くの悩める人は医療志向で、多くの人が風邪がどういう病であるかを深く考えず、風邪薬を貰って、風邪が治まるのを待つ姿勢と同じである。

 

 私たち臨床心理士は、その風邪が何故起こり、自分にとってどういう意味があるかを考えて、生き方を修正しようとする立場に立っていることを心にしっかりと留めて、医療とは違った道を歩んでいきたいと思う。