不安やわからないことに向き合う

 共感や受容を止め、クライエントが話しするのをありのまま聞く、聞いてそれを詳しく記録する、これが私の心理面接の立場です。詳しく記録するように聞けば、自ずから共感し受け入れることになります。そこからわからないところや不安なところに向かい合っていく、それがカウンセリングになっていくのだと思います。

 初心者は大学院で来談者中心療法を教えられています。来談者中心療法は共感と受容に重きをおく心理療法です。しかし、この方法で面接をすると二度目から中々うまく行きません。多くの人がそれで困っているのが実情です。

 そこで私は記録を重視することにしました。記録がしっかりしている人の面接はうまく行っています。クライエントが言ったりしたりしたことをありのままに記録するだけで良いのです。クライエントを治すという考えは持たず、ひたすらクライエントの話を聞いて記録する、ただそれだけで良いのです。

 クライエントの言うことをその流れに沿って記録していると心の動きが見えてくるのです。心は文脈で見えてくるものではないかと思います。確かに、出会ったその瞬間、その第一印象で感じがつかめることがあります。そのときでも出会いの流れや雰囲気が重要な手がかりになっています。

 普通の会話では話しを記録することはしません。記録して再現可能にする所にカウンセラーの専門性があるのだと思います。

 記録を見ていると、いろいろなことに気づきわからないところ、不安に思っているところが見えてきます。そこに関心を向けていると表に出るべきものは出てくるのです。

結果として、クライエントは自分のことを中心に話しを進めていくことになります。それが来談者中心療法です。

 

 

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