うつ病と遊び

 うつ病という状態は、精神的気力や活動性が低下した状態である。この背景には身体的の機能の低下も伴っており、身体の病気であるとも考えられている。その一因に近年抗うつ剤が発達してかなり効くようになったこともうつ病が脳の機能低下の病気であるという考えを支持している。

 生物としての人間を考えると、食べ物を口から取り入れて消化し排泄する器官を持った生き物である。ミミズから人間まで、その機構は違うかもしれないが、消化器官を備えたものとして考えられるようである。

 消化機能が低下するのがうつ病の特徴である。口が渇き、食欲が無くなり、胃が悪くなり、消化が悪くなってガスがたまったり便秘したりする。これに頭が働かないとか頭が重いとか、睡眠障害、肩こり頭痛などの症状がでてくる。これらの症状は表に出ている部分である。

 うつ病になりやすい病前性格というのがあって、真面目で几帳面、責任感が強く仕事熱心である。常に機関車の如く走り続ける人が疲労困憊してエネルギーが低下する精神的身体的病気である。

 ここで見落とされやすいのが、遊びの側面である。うつになる人は遊びが無いのではないか。ボーっとしているとか、しばらく仕事を離れて何か面白いことをしてみようということが無いのではないか。いつも走り続け、仕事をし続けることが良いことだと考えている。遊びや休息の無い生活である。

 うつ病の人の生活内容を聞いていて思うのは遊びの欠如である。遊びの少ない生活が子ども時代から続いている。現代は毎日学校に通い、その後は塾に通い、常に良い成績を取って内申点を良くしていくことが安全策になっている。一か八かの一発勝負はあまり評価されない。常に努力してこそ目標が達成できるとして遊びや休息は低く評価されている。それが社会人になっても続いているのではないか。社会人になったら遊びはダメだと考えているのではないか。

 仕事と遊びを考えると、仕事に頑張ってその後パーっと遊び呆けることが良いこともある。遊ぶ楽しみがあるからこそみんなで頑張れる。遊びを楽しくするためにつまらぬ仕事でも頑張ってやってみる。こういう遊びと仕事のバランスがうつ病の人は取れていないのではないかと思う。登山を生きがいとする人や演劇に生きている人にとって、仕事は二の次である。仕事でお金を稼いで、登山や演劇につぎ込んでいくそういう仕事と遊びが逆転している人がある。そういう人にはうつ病は無いのではないか。

 昔は生き生きとした男は、遊ぶときは家族も子どものことも、また、周囲の人のことも忘れて遊びに熱中したのではないだろうか。土佐の男衆は浜で魚が取れたぞーと聞こえてくると畑仕事は女に任せて浜にすっ飛んで行くと聞いたことがある。このような遊びと仕事の生活感がうつ病の人には欠けているように思う。

 現代は豊かになった。大いに遊ぶべきだ。世の中の景気がうつだからこそ空いた時間を利用して大いに遊んだ方がいのではなかろうか。日本が国際化して世界の人々と理解し合うには遊びの精神が必要なのではないかと思う。

 

 

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