理性と信念 その2

 理性は意識が合理的考えることで、現実に基づき間違いがない。現実生活はこの理性に支えられている。

 しかし、現実的、合理的判断だけでは生活は味気ない。心豊かな生活をするには空想の力がいる。アフリカ産のアジと聞けばどんな味がするだろうと思い、それも腕の立つ料理人の手にかかったものと聞けばおいしいものになるだろう。理性で食べていると味がしないが、感情が入ると味がわかる。新聞で読む毎日の事件はすぐに忘れるが、それが物語的になると記憶に残る。いまだに「口裂け女」と言えばみんな思い出すはずだ。それは空想の産物で、心にぴったりとくるのである。事実よりも空想でデフォルメされたものが心にぴったりくる。心理学よりも小説や昔話の方が心理にふさわしい。

 空想や思いを紡ぎだす心をアニマ・アニムスという。男性の女性的な心と女性の男性的な心の部分である。アニマ・アニムスは無意識の心で理性が入りにくく、感情に満ちている。感情に導かれて空想が出てくるのである。自分の思い、信念は感情に裏付けされ、そこには理性がかかわりにくい。理性が無くなって、感情だけになった妄想病の人はどうしようもない。感情の導くままに行くところまで行くしかない。理性が足りないと行くところまで行ってしまう。それは危険極まりない生き方だけれど、理性のブレーキは効かないから仕方がない。

 信念や思いを言葉にする時、そこに初めて理性がかかわり始める。理性と信念、理性と感情のバランス、それが大切らしい。

 社会的適応のためにはペルソナもかかわる。現実には、社会にかかわる態度と信念や感情のバランスを自我の理性がつかさどるのではなかろうか。

 理性よりも信念に重きを置くということは、理性を振り回す自我の安定感が不足しているせいではなかろうか。不安定な人ほど感情的になりやすいではないか。感情に浸っていると不安を感じないで済む。感情に駆られた人は無意識に不安定である。

理性だけでも安定ここは保てないし、感情だけでも安定しない。両方のバランスが大切である。強い信念と客観的理性、それを持っておきたい。

 

 

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