新しい前向きの心理療法

 先頃O先生をお招きして心理療法のセミナーを行った。O先生は発想が自由で上下の区別も、また、考え方の違いも気にすることなく話ができるので毎年お招きしている。先生にお会いしていると、先生に前向きのお仕事の姿勢が私たちの励みになり、自分も一歩前進していることがわかる。この会はかけがえのない良い機会になっている。

 今年の発見は、精神分析の考え方が、過去の辛い体験によって傷ついた心を瘉すことに関心を向けているのに対して、私たちの、特に遊戯療法や箱庭療法は次に何が出てくるのかと前向きに見ているということであった。

 児童養護施設や情緒障害短期治療施設で行われる心理療法では、親の情報がほとんど無いに等しい。子どもが性活している施設の保育担当者の情報があるだけである。生後すぐに乳児院に入って保育士に育てられ、児童養護施設に入ってきた子どもたちにしても、乳児院の情緒は極めて少ないよう思われる。

 その子たちの心理療法では、プレイルームでの子どもの表現するものを見て、その中に現れてくるものを追って行くことになる。過去はほとんど見えないから、今ここ、そして次に展開してくるものが重要になってくる。このような面接法は過去の親子関係を見る精神分析とは視点が随分違うと思う。

 プレイルームに入ってきた子どもが箱に入った玩具を床にぶちまける。それを見て、子どもはこのように世の中に放り出されたのだと思う。そこから子どもとの出会いが始まる。過去の捨てられた体験を修復することはできない。世の中に投げ出されたもの、それをどう始末を付けるかが課題である。投げ出されたもののなかから自分に取って良いものを拾い上げていくこと、それが自分を作って行くことにつながって行くのである。カウンセラーが子どもを大切にすることによって、子どもは自分にとって大切なものをえらびり、自分の世界を広げているのである。過去はどうでもいい、未来が問題なのである。未来を開いていく心理療法、それが私たち、遊戯療法や箱庭療法を行うものの心理療法でると思う。

 

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