姉のものの言い方がゆっくりとなり、口数も少なくなっているので心配してこの前ひさしぶりに会ってきた。姉はもう八〇歳を過ぎていて、元々口数の多い性格でもないから、加齢の結果当然とも言えるが、このままでは心配だった。義兄はとてもやさしくかいがいしく世話をしてくれているのでありがたいと思った。
姉の傍にいたら、いつも旦那さんが何でも現実的にパッパッと判断するので、自分は少し違った意見や感想を持っていても、まあ、それでいいわ、と思って意見を言わないでいたらこんなになってしまったと、ポロッともらした。
義兄はとても現実的で、早め早めに物事を処理していくたちで、私たちの帰りの交通の便も上手くつながって、計画よりも2時間も早く帰ってくることが出来た。落ち着いて現実的に判断し、的確に行動する。ユングの言う外向的な感覚・思考タイプの性格である。それに対して姉は内向的な感情・直観タイプの性格である。おまけにあまり自分の意見を言わない性格だから、日常生活は旦那さんの現実処理能力に乗っかって行くことになり、姉は自分を出すことをやめ、話し言葉もゆっくりになってしまったという。
現代は外向的、現実志向の時代である。スマホで素早く情報を取り入れ、自分に都合の良いように選択していく時代である。内向的な人、特に感情タイプの人は自分の思いに心を巡らせているうちに判断や行動が一歩遅れてしまい、引っ込んでしまう。このようなことがずっと続いているうちに、引っ込み思案になり、閉じこもりになってしまうということもあるのではないか。案外、閉じこもりの人のいる家庭で、現実志向の人が優位になって、内向的な人が出る幕がなくなっているのかもしれないと思った。
外向的な性格の時代に、内向的な人が閉じこもりになってしまうのではなかろうか。自分一人心のなかでこころの暮らしをしているのである。認知症の検査を受けたら、一見ボケたように見える姉の方が義兄より成績が良かったと、義兄は笑っていた。