母性のタイプー胎生型と卵生型

50年前には女性は家の中にいる人だった。25年前でも社会に出た女性は24,5歳になると会社を辞めるのが普通だった。その頃アメリカ西海岸に留学して、地方の大学に日本人の女性が沢山語学留学に来ているのに驚いた。結婚年齢に達すると会社にいられない時代だったのである。会社勤めを辞めて語学を身につけ何か専門職で自分の新しい可能性を開こうとしている人たちだった。そういう古い女性観が今では過去のものになってしまった。

今では女性は年頃になったら結婚するものだという考えはあるものの、現実には結婚しない人が男女とも多くなり、会社勤めを続け家の外に居たい女性が圧倒的に増えてきた。女性の多くが家に閉じこもらず外で働くことが普通になってきた。

そういう背景があって、母性に二つのタイプが見えてきた。

一つは、犬やネコのように子どもをいつも側において舐めるように可愛がり、親子密着型の子育てが好きな人で、子どもが大きくなっても親子関係が続いている。一方、巣の中でヒナを育てる鳥類のように幼い間は餌を食べさせて育て、子どもは一人前になると飛び立っていくので、そこで子離れをしてさっと別れてしまい、親と子は別々になってしまうタイプである。前者は胎生型で、後者は卵生型としておこう。

女性の中には、自分は母性が少ないと引け目に感じている人も少なく無いと思うが、そういう人は卵生型で、子どもを産み、餌を与え、あるいは、餌を食べる機会を子どもに与えるが、身体をくっつけて愛着を楽しむようなことはあまり得意でない。そういう人は親に育てられる過程で、親にベタベタに可愛がられるような育てられ方をしていないから、子どもに対してベタベタを提供することができないのである。

旧来の子育てでは、母親はいつも家にいて親子とも愛着を求め合うことが可能だったが、現在ではそれが物理的にも難しくなってきたのではないか。

卵生型の親は子どもに食べて休息する機会と教育の機会を提供する。それが、今では、子どもの世話は保育園任せにし、教育は自分で教えるよりも塾に通わせ、外で何事も学ぶ時代になったのではないか。時代は胎生型から卵生型に変わったのではないか。それ故、母性が少ないと感じる人も子育てがやりやすくなったのではないかと思う。一方、専業主婦による親子べったりの愛着重視型の子育ても経済的な理由で難しくなったと思う。

以上に述べた胎生型と卵生型が、先に述べたグループ型と一人型に対応するかどうかは判らない。それについては検討を要する。