これからどう生きたら良いかを考えるのが心理療法なら、占いもその一つになる。
占いのやり方は星占いやカードに拠るものなど様々だが、私は中国の易経に拠っている。
占い師は司馬遷の『史記列伝』にも最後に挙げられており、歴史の一角を占めている。街角で占いだけを生業としていたから、お金もあまり無く、住む家も貧しかったであろう。それでも列伝の末尾に名を連ねるだけの存在感はあったのである。
私は政治的に活動することが苦手で、長の付く仕事はやったら面白いかもしれないがやろうとは思わない。先輩は学長を長年勤めたと退職の挨拶にあったけれど、その仕事は面白かったですかと思わず尋ねたくなって、それは私のひがみ根性から出るものだからやめにした。私には街の心理療法家として占い師くらいの地位がふさわしいのではないかと思う。
占いのことを今ここに書く気になったのは、最近占いがピタッと当った気がしたからである。
私はスポーツカーに乗りたくて10年以上も前にトヨタのMRSを買った。MRSはビニールの幌で、冬の朝は硬くなって容易に開かなかった。そこで10秒もあれば開閉できるホンダのS2000に乗り換えた。この車は本物のスポーツカーという謳い文句であるが、本物のスポーツカー的な乗り方は、サーキットにでも出かけないとできないし、そんなことをしたら命がけになるに違いないと思ってやめた。高速も走って見たが全然面白くない。結局冬オープンで走るのがカッコイイとい思いになった。しかし、それも飽きてとうとう手放すことにした。
どれくらいで売れるのかインターネットに出してみたら、とたんに次々に電話が殺到してびっくりした。そして、営業マンに聞いても、いくらで売りたいですかとしか言わない。中々売値がわからない。そこで来る人みんなに逢うことにしたが、最後に来た人はプロ中のプロとも言える人だったと思う。
その買い取りのプロに出会ったと思ったので、その人と交渉して話をまとめることにした。
そこで私は心理のプロとして、プロの営業マンを見たいから箱庭も作ってもらった。
彼の箱庭は動物レベルの表現で、左上に木とそのしたに憩うライオン、左上に池と水を飲む動物たち、左下に木とキリン親子、左からゾウの群れ。
私はこのゾウの群れに乗せられたと思った。彼は何歳に見えるかというので50歳位と言ったら40歳という。左下のキリンの親子は彼が間もなく結婚するという女性であろう。
私は結婚前の40歳の男性の老け込みに驚いた。こんな車の買い取りという心ない仕事をしているとこんなに老けこむのかと思った。金儲けはしたいが、できれば、下の和菓子屋さんのご主人のようにこころをこめてお菓子を作り、人々に喜んで貰える仕事をしたいものだと思った。そこのご主人は若いようにも歳をとっているようにも見える、不思議な人だ。