自由が困る人たち

 先生のご自宅のパソコンから見つかった文章です。2016年12月の日付が入っており、内容から考えると「箱庭の表現から見た発達障害」のもとになった文章のようにも思われます。

 

 

CN 2016122 自由が困る人たち

西村洲衞男

 

 不登校ではじめてきた人の話を聞き、一段落してから白紙を一枚出し、これに「実のなる木を一本描いてください」と言うと描くことができる。次にソンディ・テストを出して、8枚の顔写真から好きな人2枚嫌いな人2枚を得たんでくださいと言うと時間はゆっくりではあるが選ぶことができる。残った4枚から好きな人2枚を選ばせると8枚のときよりもずっと早い時間で選ぶことができた。ソンディ・テストは精神病の患者さんの顔写真を集めたもので、殆どの顔が違和感があるのだが不思議と好きな方が選びやすという人が多い。人は精神病であっても、嫌うよりも好きになろうとする傾向があるのだと感心する。

 8枚の顔写真の中から好きなものと嫌いなもんを選ぶのに時間がかかったのに、4枚の中から好きなものを選ぶのはすごく早く終わった。4枚になったらすごく早く終わったねと言うとニッコリした。次に、私はこの検査を整理してその結果をお伝えしますから箱庭を作ってくださいと指示する。私の箱庭のセットはおもちゃが雑然と並び、人形や車などお菓子の空き箱に山盛りになっている、そんな雑念とした状況である。それらを前にして好きなものを選んで何か作ってくださいと言うと彼女は砂箱とおもちゃの棚の方を見ているらしく、中々手が伸びない。後ろから見ていてとても困っている様子が感じられる。

 自分についての話がほとんどできない。目のあたりが赤くなり困り果てている。かわいそうである。

 

 このような人たちが世の中で発達障害とレッテルを貼られているのだろうと思う。

 フロイトの精神発達図式に拠ると、母と子の愛着関係の次に生活習慣の獲得の肛門期が来る。物の名前や、動作や感情表現の言葉を憶え、ものの扱い方憶え、人との付き合い方を憶えていく。こうして生活の習慣をわきまえ人中で生きていけるようになると一応、人と交わって行くことができる。人に言われて期待される仕事をこなしていくのはこの肛門期をうまくクリヤーしておけばやっていける。

 この段階に留まっているのが発達障害と呼ばれている人たちではないか。

何をしても良いという課題に面したとき、何も浮かばない一人で前向きに生きて行けない人たちがついに出てきたのだ。完全にエスカレーターに乗っていけば生きていけるという考えに支配された世の中になったのではないか

 第二次大戦後、エーリッヒ・フロムは「自由からの逃走」という本を書き世界中で読まれた。自由は怖いから英雄的な強いリーダーに、民族主義のリーダーに任せて破滅に至った、それが第二次世界大戦であった。

 この発達障害の人々は英雄の導きに従うだろうか。多分社会のためなら動くのではないか。「これをこうしてください」という指示を待って生きている人たちが多くいるのであろう

 

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