前回に引き続き、富山県心理士会での研修会の資料です。
今回の資料は2015年の研修会のものてす。「水先案内人」というアイデアは、心理臨床学会の研修会で下関市を訪れた際、食事のために訪れた居酒屋さんでたまたま隣に座られた方が水先案内人のお仕事をされていた方で、その方の話がとても印象に残ったことから来たものだと聞いたことがあります。
前回掲載の「真相分析法」と内容が重なるところがありますが、そのまま掲載しました。
また前回同様、今回の資料もパワーポイントで作成したものを構成しなおして掲載しています。
富山にはお仕事以外でも行かれたようで、富山市で春に行われる「チンドン祭」を一度見てみたいと、ご家族で訪れたこともあるとのことです。
※富山の研修会の資料の公表に関しては宮下貞和さんにご協力をいただきました。
心の水先案内という心理療法 確かな人生を送るために
檀渓心理相談室 西村洲衞男
心の水先案内
・臨床心理士のアイデンティティーとは心の水先案内ではないか?
・水先案内人:日本初の国家資格:槁根津日子ー神武天皇東征の折、速吸の門を通るとき水先案内をした
・臨床心理士の仕事は人生の危機を通り抜けるためにたましいの世界を共に歩んでいくことである
たましいの世界とは
・たましいの世界とは何か、心、感情とどのように違うのか
・人は死んで亡骸とたましいに分かれる
・亡骸は汚れたものであり土に帰る
・たましいは亡骸を離れて天に昇る
・たましいに本来個別性はなく無分別の存在である。たましいに名前をつけることができない
魂魄
・魂魄の魂は大和魂とか幽霊とかスポーツマンシップなどの言わば精神である
・魄は身体の精神で。健全な身体とか病の身体である
・「たましい」は多分古い言葉で、仏教と共に漢字がが到来して「たましい」に「神」という感じを当てたと思われる(cf:日本霊異記)
・たましいは漢字と共に入って来た仏教によって土地神となり果て、菩薩を守る神将となったと思われる。例えば十二神将。
たましいの無名性
・本来のたましいは無名で、名前を付けて区別することが不可能である 無分別の存在
・たましいは無名で、個別性が無いにもかかわらず、超越的いのちを持っており、人を生かし続けている
・痴呆とはたましいの抜けた殻の魂で生きている状態である
・たましいが抜けると、魄は殻となり、硬直や無力が生じる
・たましいはいのちのエネルギーである
たましいと真如
・ 仏教でいう真如とは無分別の、つまり名前がつけられないエネルギーである
・そこから生きるいのち(永遠の生命)が出てくる
・たましいと真如とは同じものと見做して良いのではないか
・心的エネルギーの出てくるところ、それがたましいの世界であり、真如の世界である
自我意識の世界
・自我は個々の存在を認識し、個別化し、名前をつける。
・意識の世界では、すべてに名前が付けられ分節化されている
・自我意識が出てくると他者が存在する。相手を他者として認める
・自我意識が弱いと他者を自分と同じように見做す。相手の心理をこちらから操作しようとする
阿頼耶識
・意識と真如の間の世界を阿羅耶識という(井筒俊彦:『意識の形而上学』)
・阿羅耶識とは意識されるが、分節化が十分でない領域で、イメージの世界であり、夢や箱庭の世界である
・イメージの世界では、山は神々の座であり、母である。川は平地を潤し、生きものを生ぜしめるので父親である。分節化しているが、違った意味を内包している。
イメージの創造性
・イメージはデザイナーが創るデザインとなって私たちの生活を守っている
・イメージつまり阿羅耶識はたましい・真如という無意識から生じて、私たちを生かし続けている
・たましい・真如は私たち人間の生活の基盤である
・意識されるものは全てたましいから出てくる
無意識性善説と性悪説
・フロイトやユングは無意識が意識の活動を妨げると考えた。言わば、無意識性悪説である。
・一方、デザイナーや小説家から言えば、デザインや物語は無意識から出てくるので、無意識性善説に基いている
・フロイトやユングは神経症や精神病を意識の側から研究したので性悪説になった
・私は無意識性善説の基づいて、たましいや真如から生じてくる阿羅耶識・イメージの内包するエネルギーを利用する
・人生もたましいの導きに依るのが良い
心理療法に代わる新しい心理面接法としての真相分析法
・人生をより良く生きるために真相分析をおこなうもの
・生活状況を詳らかに調べて、如何に生きるべきかを考えるもので、心理療法とは異なる
・精神分析やユングの心理療法はClのコンプレックスを解消したり、悩みや症状をなくそうとするもので、医学領域の療法の一つである。
・臨床心理士は病気や障害を抱えて生きることにかかわる。合理的新興宗教の一つ。
真相分析
・Clの生活歴を調べる
・Clの家族をはじめ地域も文化も調べる
・発達的観点からの査定
・性格や知能の測定
・心理テストによる査定 バウム・テスト、ソンディ・テスト、ロールシャッハ・テスト、箱庭など
・夢分析 過去の印象的な夢、最近の夢
・最近の出来事
心の構造
・ものごとを意識して見て考える私がひとつの中心である。
・その意識を中心にして感情や衝動がある。
・人間は動物で身体をもっていて、その感覚機能は意識の視野の中にある。
・人間には動物的な心が働いていて、それは雰囲気や気配として意識されるが記憶に残ることはない。
・動物的な心は意識に対して夢や気配、雰囲気としてメッセージを送ってくる
・人の心は精神的な心、知性や感情、と動物的な心の2層構造として考えられる。
動物的な心
・人間は脳が知的に進化することによって、動物的な心を見失ってきた。
・動物的な心のメッセージは夢や遊び、空想や衝動的な行為、あるいは、怪我や病気によってわかるだけとなった。
・動物的な心は雰囲気や気配として意識され、記憶に残らない。阿羅耶識(金岡秀友 般若心経)
動物的な心との接触の重要性
・子供は遊びの、少年は空想の、大人は夢のプロセスに沿って生きていると人生がまともになる。
・それを河合隼雄は明恵上人の夢記から、「夢を生きる」と言った。
・夢には解釈はいらない。夢を生きることで人生が正されていく。
動物的な心のサインとしての病気
・人は外界に適応できないとき、病気になりがちで、飲み込み難い仕事を引き受けたとき逆流性食道炎になり、嫌な環境に適応しなければならないとき、アトピー性皮膚炎になる
・頑固に強迫的に仕事に精を出すと、細胞レベルで退行し、ガンになりやすい。
・環境に圧迫を感じるとき高血圧になりやすい
・新たな仕事に挑戦しようとするとき糖尿病を発症する。
・職場で自分らしく振る舞えないとき、腹痛や便秘や下痢に悩むひとは少なくない
心理学的な法則
・人は生まれてすぐから、自分で世界を認識し、この世界で如何に生きていくかを、特に動物的な心は考えている。
・養育過程で愛着が満足されていると、人との接触は豊かになる。
・(精神発達)生活習慣を獲得した後、空想を基にした遊びが展開し、次に現実を離れた空想が発展し、次に現実的に考えるようになる。
続 心理学的な法則
・人は想像力によって、人のことを自分のことのように考える。親兄弟恋人の間で起きやすい。母親思いの男、兄思いの妹。
・愛と攻撃は対人関係の衝動の表と裏で、互いにその裏は見えにくい。
・内面深く動物的心に触れるほど、対人関係が広がりやすい。教育分析を受けてユング心理学を学んだ人はそれだけ、自分の内面を探求した人は対人関係が広がった。
人間は世界観・文化に生きている
・現代は核家族化しており、その中で旧家族的な家で生きている人は現代社会に適応できにくい。~情けは人のためならず
・宗教を持つのは人間の特性の一つで、見えないものをあると考える能力を持つにいたった。精神分析はユング心理学も宗教の一つ。
・宗教を超えるには、多次元的な理解が役に立つ。(河合隼雄)
心身の調和の方法
・心身の調和の手段として座禅、ヨガ、太極拳などなど沢山ある。
・夢・箱庭もその一つである。
・夢を報告し、箱庭を作って思うところを率直に話し合っていると、率直に深層の心とつながりやすくなり、人の存在の真相が次第に明らかになる。
・本当のことがわかると人は安心し、生きる意欲が出てくる。これがヨガや座禅との違いである
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