長谷川泰子
また走り始めた。
春先に腰を痛め、その後少しずつ痛みは減り日常生活に支障はなくなっていたものの、完全には痛みが消えない。数年前から続けていたランニングからも長い間遠ざかっていた。今でも体に若干の違和感はあるのだが、そろそろ走ってみようと思った。久しぶりにランニングシューズを履いた。
以前はゆっくりとしたペースではあるものの、5~7km程度は問題なく走れていた。しかし半年以上走ることから離れていると、すっかり筋肉は落ちていて、走り続けることができない。少し走っては歩き、また少し走り、の繰り返しである。久しぶりだから仕方ないと、無理をせず、1.5kmほど走って終わりにした。
数回続けるうちに、少しずつ続けて走ることができるようになってきた。休み休みではあるけれど、また走ることができてうれしい。
不登校の子どもやその親、休職中の人などによく話すことだが、良くなっていく時に一直線に上昇するのはかえって心配になる。学校に行って短時間でも先生と会えるようになったとか、まずは半日からでも職場復帰をしたとか、そんな時はこのまままっすぐ、少しでも早くもとの状態に戻ろうと考えがちだ。しかし、良くなったり悪くなったりを繰り返しながらちょっとずつ変化していく方がやはり確実だと思う。
上昇ばかりで一度も停滞や悪化がないと、いつまた悪くなるのかと不安になる。そして少し調子が悪いだけでももう駄目だと悲観しぽきりと折れてしまう。しかし本格的な復帰の前に、悪くなってはまた上がり、時には停滞も経験し、ということを何度も繰り返していると、調子が悪いことがあってもまたいつかは上がるだろうと楽観的に考えることができる。時間がたてば少しずつ変わるだろうと自然に信じて待つ力がつく。上がったり下がったりしながら、少しずつではあるものの確実に変化し、上がっていく。
落ちてしまった筋肉はすぐにはつかない。筋肉がないままいきなり走り出しても長くは続かない。走り続けるには走り続けるだけの筋肉や体力が必要なのだ。
再度走るための新しいシューズを買ってもいいかなと思った。今の自分の状態、体力に合った新しい靴を履いて、ゆっくり行こうと思った。