介護職の方の研修会のための資料と思われる文章です。最終更新日は2008年5月27日です。
心理的援助における心の問題
檀渓心理相談室 西村洲衞男
人に対する援助を仕事とする人の心理的な問題について考える
1
・心理的な援助をする場合、相手の心に対する敏感さが必要です。
・この敏感さが無いと、いろいろなところですれ違いが起こり、様々なところでストレスが生じます
2 客観的な態度の重要性
・心理的な仕事は冷静に素直に見ていくことがとても大切です
・そのために、綿密なメモを取ることをお薦めします。
・メモを詳しく取っておくと他の人に説明するとき正確に伝えることができます。
・メモを取ると自分のことと相手のことを区別しやすい。私は私、あなたはあなたという区別、この区別があると過剰な思い入れをしないで済む。
3 自分の仕事振りを人に聞いてもらって振り返る機会を作る
・カウンセリングや心理療法ではスーパービジョンとかコンサルテーションといって、面接内容や見聞きした内容を時間の順序にしたがって書き出し、第三者の下でことの次第の流れを見ます。そうすると対象の人や関わりのある人の心の動きや雰囲気がわかります。
・私たちは感情的になって仕事をしていると状況を客観的に見ることができません。大抵はことの次第はわかっていてもどんな心の状況になっているのかわからないことが多いのです。それは第三者に話をすることによって明らかになってきます。第三者は、岡目八目で、人の心の動きがよく見えるものです。担当者の目、第三者・スーパーバイザーの目。
4 援助してもらう人たちのプライバシーを大切に
・守秘義務、これが大切です。
・人の秘密を聞くと大抵それを人に言いたくなります。秘密は心に重たいから人に話したくなるのです。
・秘密を他人に話すと、その人は風船がしぼむように心がしぼんでしまいます。しぼんだ心ではもはや援助することはできません。
・守秘義務、それを守る能力が援助力と言っても良いくらいです。
5 人を援助していると怒りや不満が出てくることがあります。
・援助職にある人も人間ですから相手に対する怒りから嫌味を言いたくなることもあります。その不満を撒き散らしていると、その不満は聴いた人も不愉快になるので、嫌な雰囲気がうまれ、結局は言った本人に返ってくるのです。
・そのような不満はスーパービジョンのところで解消することが大切です。それには、メモを元にスーパーバイザーに話をして、怒るところでは怒り、笑うべきところでは笑うべきです。そうすることによって援助的な関係のなかで人間的に振舞うことができます。
・怒りの裏には愛情があります。怒りを伴わない愛情はないと思います。
・スーパーバイザーのところに行って、嫌いな人の悪口を精一杯言っていると、きっとその人が好きになると思います。嫌いという気持ちの裏に愛する気持ちも隠れているのです。
6 熱い愛と冷たい愛
・大体、熱心に好意的に近づいてくる人は間もなく去っていくでしょう。それに引き換え、慎重に近づいてきた人はしっかりとした関係ができるでしょう。熱心すぎると、あまり良いことはありません。でも熱心さは大切です。
・冷静な愛、それが大切です。
・「すべては創造主が作られた、責任は創造主にある」「人は自然のなかに生きている、だから自然のプロセスにまかせる」「世の中には自分で治っていく人もあれば、自ら自滅の方に行く人もある」それを冷静に見る力を。
7 自由の中の孤独
・人は歳を取るにつれ、ギラギラしたものが薄れてきて、人間関係が希薄になります。その分個人として自由になります。大体50歳くらいから、自由の中で孤独になり、頼りなさが生きる力を減退させる場合があります。そういう人は早く呆けたり、萎縮して死ぬ方向に向うと思います。萎縮して死の方に向かっている人を援助することはとても難しいと思います。
8 ギラギラした欲望や感情が薄れて人間関係から自由になりたい人
・子どもから自由になりたくて呆ける人もあるのではないかと思います。
・自分一人の世界に入るには呆けるのが一番良いのでは?
9 人を助ける仕事をしながら、人間を研究する態度を持つこと
・人に対する援助には限界があります。
・児童養護施設にいると心はいくらあっても足りません。
・人は一人ひとり自分の力で生きていくということを前提に援助は控えめに。援助者は常にケチであれ!でも思いやりの心はいっぱい。
10 援助者自身の喜び、楽しみ、幸せの時間の確保
・自分の自由な時間を持つこと それは周囲の人に希望を与えます