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旅への切符

長谷川泰子

 

 先日、あるところで質問に答えて話をしていたときに、ふっと口から「カウンセリングというのは生活を豊かにするものではないか」という言葉が出てきた。普段、そういうことを考えていたわけではなけれど、後から改めて考えて確かにそうかもしれないと思った。

 一般的に、上手くいかないことや悩みごとがあったときにカウンセリングに行って相談するものだと思われている。しかし、実際は悩みや困りごとというのはひとつのきっかけのようなものではないか。目の前に立ちはだかった問題について話し合ううちに、自分の生活、生き方を意識的に考えるようなところが出てくる。何もこれまでの人生が間違っていたとか、今の自分がいけないとか、そうやって自分自身を批判的に見るのではない。模範的な生き方を追求しているわけでもないし、一定で共通の目標やゴールがあるわけでもない。ただ、もっと自分らしく、より豊かな生き方をするにはどうしたらいいか、それを考えるのがカウンセリングだと思う。悩みや困りごとというのはカウンセリングにおいては切符のようなものである。自分らしい生き方を見つける旅に出るための切符だ。

 檀渓心理相談室のホームページのトップ“檀渓心理相談室でできること”のところには

 

  良い出会いをするために 

  より良い自分らしい生活を見つけるために 

  自分自身とより深い出会いをするために 

  様々なこころの悩みの相談を受けています

 

と書いてある。この文章は私が考えたものではない。前室長の西村洲衞男先生が相談室のパンフレット用に書かれたもので、私がこの相談室を引き継いだ時に、ぜひこの文章も引き継ぎたいと思ったものだ。私たちの相談室が目指すカウンセリングのあり方を示していると思う。

 “こころの悩み”は“良い出会い”“より良い自分らしい生活”“自分自身とより深い出会い”につながっている。悩みの奥に続いている、自分や他者とのより深い出会い、そして自分らしいこころ豊かな生活を、カウンセリングでの話し合いを通じて見つけたい。

 檀渓心理相談室では、そういうカウンセリングを目指している。

 

 

 

 

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