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見つけた人が来るところ

長谷川泰子

 

 少し前のことだが、見たい展覧会があってとある美術館に行った。温泉が出るいなか町にある美術館だ。簡単にお昼ご飯を済ませてから行こうと思い、喫茶店はないかとスマホで検索したところ、美術館の近くの小さな店が一軒ヒットした。ナビを頼りに細い道を車で進んで行って目指す店は見つかったのだが、驚いたことに駐車場に入れない車が順番待ちをしている。どうやら人気のある喫茶店、というより“カフェ”らしい。待つのも面倒でそこでの昼食はすぐにあきらめ再度スマホで検索し、車で15分ほどのところにあるコメダまで行って昼食を済ませた。

 昔はちょっと引っ込んだところや行きにくいところ、目立たないところにあるような店は、どうやってお客さんに来てもらうか、相当に考えなければならなかったと思う。今ももちろんそうに違いないが、インターネット、特に飲食店の検索サイトなどの登場で、だいぶ事情が変わってきているのではないか。ネットでの評価が高ければ、多少行きにくい店でも人は押し寄せるようだ。行きにくい場所にあるということが付加価値を生む場合すらあるだろう。

 コーヒーが好きで、コーヒーは自分で豆を挽いて淹れる。よく行くコーヒー豆の専門店は夫婦2人でやっている小さな店で、豆を買いに行った時に他のお客さんを見かけることがあまりない。これで本当に経営は成り立っているのかと余計な心配をしてしまうが、ネット販売もやっていてそれなりにやっていけるのだという。ワイン好きの知人の知り合いの中には、人里離れたところに土地を手に入れて自然派ワインを造ってがんばっている人がいる。少量生産の小さなワイナリーでそれなりに評判があるらしく、これもネット販売ですぐに売切れてしまうらしい。

 インターネットのおかげで大きな組織に属さなくても小さなところで個人でやっていく可能性がひろがったようだ。この相談室もネットで検索してホームページを見て来られる方がほとんどだ。相談室の宣伝にお金をかけられるほど余裕があるわけでもないし、そもそもおおっぴらな宣伝がしたいわけでもない。相談室を続けていくためにお金のことはもちろん考える。この相談室を見つけてもらうための地道な努力もそれなりにする。しかしそれ以上のことは考えない。この相談室を見つけて来たいと思った人が来る。ご縁がある人が来る。それが全てでそれでいいと思っている。

 

 

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