若い時には人に頼ることがどうにも苦手だったが、年齢が上がるにつれて、人に頼ることへの抵抗感は減ってきたように思う。すっと自然に、というところまではなかなかいかないけれど、ちょっと考えて頼った方がいいなと思えば、それほど葛藤を抱かず、あるいは変なかっこつけをせずに、お願いと言えるようにはなってきたようだ。
今思うと、卒業論文も修士論文もテーマは依存性についてであったので、昔は依存について相当なこだわり、葛藤や抵抗があったのだろう。甘えたらいけない、自立しないといけないという思いが強かったのだろうが、実際には甘えたいという思いがあったからこそ、過度にそのことを意識していたのかもしれない。一度甘えたら、どこまでもずるずると甘えてしまいそうで、そうなると自分がみっともないようなことになるのではないか、それが不安で突っ張っていたのだろう。こういう心理は思春期以降によく見られる。人に頼ることを避けるために他の人との自然な関係性を拒否してしまうようなこともあって、そうなるともう自立ではなく孤立となる。
本当に自立している人は、何もかも自分でやるのではなく、適当に人に頼ることができる人である。人に頼るけれど甘えすぎない。甘えるか甘えないか、0か100の思考ではなく、その場の状況に応じて、50頼ってみたり、相手に20ぐらいお願いしてみたり、思い切って80甘えたり、そういった判断が自然に、適切にできる人が、本当に自立している人と言えるのではないだろうか。
自分がいつ依存や甘えということに若い時ほどこだわりを持たなくなったのか、あまりよく覚えていないけれど、今考えてみるとスーパービジョンに長く通ったことも良かったのかもしれない。自分がした仕事について一対一で指導を受ける時間であって、自分のやったことを全てさらすことになる。かっこつけようもないし、かっこつけていては適切な指導・助言も得られない。私のスーパーバイザーの先生は、とても丁寧に温かく、しかも的確な指導をしてくださる先生だったから、こちらも安心して自分をさらすことができた。スーパービジョンという全面的に頼る場を長く経験し、そこで温かい指導を受けたことが、頼ることへの抵抗感を少なくしたのかもしれない。
良いスーパーバイザーの先生に出会えて、自分は本当に幸せだったなと思う。良い体験、良い知識、良い知恵をたくさんもらった。スーパービジョンに通っている時は、それが当たり前だったので、その先生のところに通えたことがこんなにラッキーなことだとはあまり意識もしていなかった。臨床心理士としてそれなりに自立して仕事ができるようになり、改めてスーパーバイザーの先生のことを思うと、あまり力まず、自然な感じでがんばろうと思える。人との良い体験、良い関係は、それだけでこころの中で大きな財産となるのだろう。