甘いものが好きで、特にあんこを使った和菓子には目がない。ようかんや大福など、おいしいものをいただいたりすると食事をセーブしてでも食べたくなる。それでも洋菓子が嫌いなわけではなく、時々急に生クリームたっぷりのケーキが食べたくなることがある。
急に食べたくなった時にケーキを買うというのは、実は少しハードルが高い。せっかく食べるならケーキ屋のおいしいものをと思うのだが、ひとつだけ買うというのはちょっと気が引ける。ひとつでなくふたつ買えば問題ないのかもしれないが、日持ちするものでもないし、食べたくなったらすぐに食べたいけれど、ケーキはひとつで十分で、無理に食べればかえっておいしいとは思えなくなる。それに何よりケーキ屋で買うケーキは高いのだ。結局、ケーキが食べたいと思っているのに簡単に購入できるコンビニスイーツで済ませてしまったりすることが多いのだが、中途半端なところで妥協したような感じで、せっかく食べてもあまり満足感が得られない。
先日、相談室に向かう途中で、急にケーキが食べたいというという気持ちに襲われた。はじめはどこのコンビニに寄って行こうかと考えていたのだが、赤信号で止まったところで、近くにケーキ屋があることを思い出した。今日こそは店で買おうと決め、お店に向かい、「ひとつだけですけどいいですか?」と断ってモンブランを購入した。
もちろんケーキは美味しかった。しかしケーキの味以上に、手軽に済ませず、ちょっとだけがんばって買った、そのほんの少しの勇気と手間の分だけ満足感があった。
手軽に済ませる手段はいくらでもある。手軽に済ませることが必要な時もある。しかしささいなことでも妥協しないで、自分の気持ちに忠実になることが大事な時もある。
今、いろいろな相談機関があちこちにある。電話やオンラインを使うものも結構あるようだ。時間をかけて相談室に行くなんて面倒だ、お金を払って話を聞いてもらうなんてもったいない、そういう人もいるだろう。
開業の相談室というところは、ケーキが食べたいときにはひとつだけでも専門の店で買いたい、ケーキ屋のケーキが食べたい、そういう時に来るところなのかもしれない。ちょっと敷居が高いかも知れない。ちょっと勇気が要るかもしれない。時間もお金もかかる。でも自分の気持に忠実にならざるを得ない。いくつかのハードルを越えてやってきた人たちのそんな気持ちに応えられるような、そんな相談室でありたいと思っている。