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続ける

 先日、あるお店にコーヒーを飲みに行った。自宅から少し離れてはいるがしばしば車で前を通るところで、子どもの頃からそこに小さな店があることは知っていた。しかしお店に入るのは今回が初めてである。昔は「喫茶店」だったが、今はおいしいコーヒーを出てくる「カフェ」という雰囲気で、前から少し気になっていた。

 「カフェ」っぽくはなっているものの、建物は昔からのものだ。実際お店に入ってみたところ、おそらく内装もインテリアもあまり変わってはいなさそうだ。テーブルや椅子も長年使い込まれたもので、それがこの店特有の安心感のようなものを醸し出している。居心地が良く、様々な年代の人でにぎわっている。

どうも50年以上も前から同じところで同じ看板で続いている店らしい。お店の後ろに民家があり、その家族によって経営されているようだが、個人経営の喫茶店でそれだけ長く続いている店もあまりないのではないか。注文してから豆を挽いて淹れるコーヒーもおいしかった。

 

 この相談室を引き継いで4年が過ぎた。はじめは戸惑うことがあったり気負いすぎたりすることも多かったが、ようやく最近、私なりのスタイルでこの相談室を続けていこうと、あまり力まずに思えるようになってきた。この相談室に来た人たちや仕事を通じて出会った人、一緒に学ぶ仲間との話し合いなどで積み重ねられたものがあったからこそ生じた変化だと思う。

 この相談室も開室してからすでに30年以上が過ぎた。個人開業の相談室としては老舗の方だ。今でも時々、以前、西村洲衞男先生や良子先生のところにカウンセリングに通っていたけれど、また相談に行きたい、という連絡をいただくことがある。もう洲衞男先生や良子先生がいないということを知っていて、それでもやはり檀渓心理相談室にと思って連絡をくれる。なかには最初に相談に来たのは20年以上前、という人もいる。

 こういう人とお会いすると、同じところで同じ看板で続けていくことの重要性を実感する。できるだけ長く、この仕事をこの場所で続けていきたいと考えている。

 

 

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