私は臨床心理士であって医者ではないので、医学的な知識は持ち合わせないが、しかしカウンセリングで様々な人にお会いしていると、どうもこの時期(2月頃)に調子を崩す人が多いように感じている。
調子の崩し方は様々で、体調不良を訴える人もいるし(どこがどう調子が悪いかも千差万別で、腰痛に見舞われる人もいれば頭痛が強くなる人もいる)、気分の落ち込みがひどくなる人もいる。他にも、うっかりミスなどの不注意が目立ってきたり、物忘れや思い違いが多くなったりする人もいる。それも関係するのだろうか、ちょっとした怪我をしたり事故を起こしたり、などもある。いらいらしやすくなって、人ともめたりケンカしたり、などということもあるようだ。統計を取っているわけではないし、詳細な記録をつけて他の時期と厳密に比較したうえで言っているわけではない。客観的な証拠があるわけでもなく、いわゆる「エビデンス」などとは無縁の、なんとなくの印象に過ぎない。
「三寒四温」という言葉があるが、この時期は寒暖差が激しく、その変化に合わせることが大変ということもあるのではないかと勝手に思っている。少し温かくなって、ちょっと気持ちも体も緩んだところでまた寒くなる。そういった外の世界、環境の変化に合わせていくことに多くのエネルギーを注がないといけない。そうすると、どうしたって他のことに気がまわらなくなってしまう。冬から春への変化はとても大きいのだ。木々の緑も枯れ落ちたモノトーンの世界でちぢこまって寒さに耐えていたところに、急にカラフルで華やかな時期がやってくる。その変化について行くのは思っている以上に大変なことなのではないか。温かくなって過ごしやすくなるからそれでいいというのでもない。良い方向でも悪い方向でも変化は変化で、変わることに合わせていくのはエネルギーを消費する大仕事だ。
しかも今の時期は年度の終わりで、4月からの様々な変化が少しずつ見え始める時でもある。変わっていくこと、変わらなければならないことに不安を感じる人もいれば、周りが変わっていく中で自分だけが変わらないでいることに不安を抱く人もいる。いずれにせよ、変化の前で落ち着かない気持ちにさせられる。
この時期、こういうことをカウンセリングに来た人に話をすることが多い。話したところで何か良い方法があるわけではない。ただ今の時期が過ぎるのをじっと待っているしかない。しかしこういうことがあると話をすると、ただ待っているだけにしても、ちょっと見通しが立つところがあるかもしれない。それぐらいのことだ。
私自身もこの時期はいつも以上に安全運転を心がけるようになる。なるべく慎重に、無理をせず、季節が過ぎるのを待つつもりだ。